パジャマの手売りからブランドをスタート
小林さんが運営するメンズブランド、PHINGERINの原点はパジャマ。ブランド設立4年目を迎える今はさまざまなアイテムを展開しているが、もともとは高級シャツ生地を使ったパジャマを、自分で手売りすることからブランドをスタートさせたという。「振り返るとかなり無謀だったと思いますが、当初はブランドの運営法がよく分からなかったため、開業資金のすべてをイタリア産のデッドストックの生地代と、500着分のパジャマの制作費につぎ込みました」最初に500着のパジャマを作ってしまったため、事務所は在庫と商品を入れる箱で溢れ、小林さんはその中に埋もれていたとか。「パジャマの夢にうなされながら『この先どうしよう』という不安で一杯でしたが、『500着売り切れなかったら、そのときは才能がないと思って諦めよう』という覚悟はできていました」
作品発表することの大切さを実感
1年間の手売り生活を経て、手売りによる販売に限界を感じた小林さんは、友人の雑貨店で展示会を開催することにした。都心から離れた場所だったにも関わらず多くの友人、知人が駆けつけ、ブランドをもう1シーズン続けられるだけの受注を受けることができたという。「展示会の真似ごとのようなものでしたが、展示会で多くの人に作品を知ってもらうことの大切さを実感しました」その後はパジャマを買ってくれたお客さんのつながりで、シーズン毎に南青山のレストランで展示会を開催。バイヤーに展示会に来てもらうために、全国の主要セレクトショップにダイレクトメールと作品の写真を送ったり、直接売り込みをかけたりするなど、小林さんは地道な活動を重ねた。
少しずつブランド運営のノウハウを習得
通常バイヤーの元には多くのブランドから招待状が届くため、PHINGERINのような独立系ブランドの展示会に呼ぶのはなかなか難しい。だが、小林さんの作品の写真に興味を持った大手セレクトショップのバイヤーが展示会を訪れ、実際の契約に結びつくラッキーも。「なぜPHINGERINに興味を持ってくださったのかは分かりませんが、この世界は何がきっかけになるか分からないと改めて思いました」右も左も分からない状態でブランドをスタートさせたため、「勉強代は相当支払ったかなと思います」と小林さん。「原価計算や工場や生地屋さんとの値段の交渉も、もっと経費削減できたと反省することもあります。でも、ひとつひとつ経験しながら学んでいくしかありません」