文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

ROTARI PARKER アクセサリーデザイナー 広田 理恵 1985年生まれ。岐阜県出身。2006年3月にアパレルデザイン科、2007年3月にファッション高度専門士科を卒業。アートギャラリーが運営するサロンで接客やイベントの企画・運営、グッズ制作などに携わった後、2009年2月にROTARI PARKER(ロタリパーカー)を立ち上げる。現在、全国のセレクトショップやアートギャラリーショップで商品を展開。2012年夏ごろ、ウェブショップをオープン予定。

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ライター 武田 京子

日本大学芸術学部放送学科在学中、文化服装学院II部服装科に入学、卒業。文化出版局『装苑』編集部に在籍後、いくつかの編集部を経て2005年よりフリーの編集・ライターとして活動。

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ROTARI PARKER アクセサリーデザイナー 広田 理恵

目指しているのは人の心を満たすような物作り

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。今回ご登場いただくのは、アクセサリーブランドROTARI PARKER(ロタリパーカー)のデザイナーである広田理恵さんです。

アート性は高くてもデイリー仕様に

クッキーやキャンディー、スナックなど、お菓子を樹脂で固めたアクセサリーを展開しているROTARI PARKER(ロタリパーカー)。3年前にブランドを設立した当初から、広田さんは「日常で身につけられるアクセサリー」を目指して制作を続けてきた。学生時代「アートとファッションの関係性」に興味を持ち、卒業後はアートとファッションの境界線を探るためにアートギャラリーが運営するサロンに勤務。ギャラリー併設のサロンで行われるイベントの企画や運営、グッズ制作などの幅広い業務に携わるうち、非日常的なものではなく、生活の一部になるようなものを作りたいと思うようになったそうだ。「ギャラリーで展示する作品は大振りなものを作りますが、商品にするときは小さいパーツに分解するなど、デイリーに使える形に落とし込むようにしています」

趣味のアクセサリー作りが仕事に

アートギャラリーのサロンに勤務しながら、仕事の合間にアクセサリーを作り楽しんでいた広田さん。あくまでも趣味の範囲内だったが、身につけていたお菓子のアクセサリーが知り合いのキューレーターの目に留まり、別のギャラリーのショップで販売されることに。既にアートギャラリーを辞めることが決まっていたこともあり、ROTARI PARKERを立ち上げた広田さんの元には、ショップで作品を目にした人たちから徐々に制作依頼が舞い込むようになった。そして大きな転機となったのは、2010年秋に開催されたルミネ新宿店の催事「ルミネ・ミーツ・アート」への参加。多くの人がROTARI PARKERに興味を示し、後日ブランド単独の催事が行われたり、雑誌で紹介される機会が増えたりと可能性が広がっていった。

お菓子を樹脂で固め始めた理由とは?

広田さんがアクセサリー作りにはじめて触れたのは、アパレルデザイン科の授業。樹脂を使ったアクセサリーを制作した。そのときお菓子は使わなかったが、あるとき手元にあったクッキーを、樹脂で固めてみようと思い立つ。「以前、仲のいい友達からもらった手作りクッキーをずっと残しておきたい、お守りのように身につけたいと思ったのを思い出したんです」これをきっかけに、しけったり、食べきれなかったりしたお菓子を樹脂で固めてアクセサリーにするのが広田さんの趣味になっていった。「もともとはアパレルデザイン科でしたし、学生のときに作っていたのは洋服で、まさかアクセサリー作りが自分の仕事になるとは思っていませんでした」



さまざまなお菓子で埋もれた作業机。カラフルで美味しそうで、見ているだけで楽しい気分になる。

いかに生産性を上げるかが今後の課題

あれもこれもと欲張らず、無理のない範囲で物作りを行ってきたという広田さん。クリエーションとブランド運営の明確な線引きはしておらず、売ることだけを目的とした物作りはしたくないという。「アクセサリー作りは自分がやっていて楽しいことであり、また資金的にも無理のない範囲でやっているので続けてこられたのかなと思います。ただし制作に時間と手間がかかるところは、解決していきたいですね」お菓子の種類にもよるが、樹脂を塗って乾かす……の作業を何度も繰り返すため、ひとつのアクセサリーにつき1~2週の制作期間がかかる。今はすべての作業をひとりで行っており、強度のことを考えると工程を減らすわけにはいかないため、今後は単純作業の部分を人に任せるなどして生産性を上げていきたいそうだ。

人との出会いを大切にしていきたい

広田さんの活動を支えているもののひとつが、さまざまな人とのつながり。学生時代から学内だけでなく、ギャラリスト(美術商)やフリーペーパーの編集者など外部の人たちとも積極的に交流しネットワークを築いてきた。だが意外なことに、ブランドの営業活動は一度もしたことがないという。「ひとつひとつの出会いと向き合い必死に作品を作ってきたら、認めてくれる方がいたという感じです。営業をしないのは、単純に得意ではないからです(笑)」これまでは不定期に新作を発表してきたが、今後はシーズンごとにテーマを決めてコレクション展開していく予定だ。「シーズンごとに、ストーリーを考えて作品を作っていきたい。そして、ゆくゆくはアクセサリーとリンクさせた洋服のコレクションも作りたいです」
※この取材内容は2012年3月時点のものです。



食べ物を扱っているだけに(?)、食事には興味がある。毎日の食事が人の心に大きな影響を与えると実感しているそう。


樹脂を削るヒートカッターは必需品。樹脂が溶けるときの匂いを吸わないように、防毒マスクをつけて作業するときもあるとか。


大振りのアクセサリーは展示用のもの。食パンを使ったブレスレッドや、プレッツェルのピアスは定番品だ。


(左)東ハトキャラメルコーン40周年記念イベントにて、なでしこJAPANの選手に贈呈されたメダル。
(右)TOKYO CLUTUART by BEAMSで限定発売された、cookieboy氏のアイシングクッキーで作ったブローチ。

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