在学中、夢中になった写真が現在の職業に
メンズのファッション誌、広告、ミュージシャン、俳優などでフォトグラファーとして活躍する田邊 剛さん。服飾とは異業種ともいえる写真に魅力を感じるようになったのは、文化に入ってからだそうで「スタイリスト科に入学してから、ファッションだけでなく、映像、建築などにも興味を持つようになりました。ファッション誌というよりも、当時よく見ていたカルチャー誌から写真、フォトグラファーの世界を意識するようになった感じです。学生時代は、仲のよかった友達にカメラを借りて、人物や風景などのスナップ撮影に夢中になっていましたね。ヨドバシカメラで1本100円ほどの安いフィルムを買って、文化の近くにあった文具店で現像してもらったりして。そんな日々の中で、趣味だった写真を、なんとなく仕事として考えるようになりました」
憧れのカメラマンのアシスタントに
写真を仕事にするためにはどうすればいいのか、アシスタントになるという知識もなかったという田邊さんの目に留まったのが一冊のカメラ専門誌。「雑誌でよく見ていた、富永よしえさんの事務所の連絡先が載っていたんです。アシスタントの募集はしていなかったのですが、履歴書と作品を送って、本人から連絡をもらうことができました」幸運にも採用が決まり、「戸惑いの連続だった」というアシスタント時代がはじまる。「初めて撮影現場に行ったときは衝撃的でしたね。スタジオの中に一つの空間を作りこんでいて、独特の空気が流れている感じでした。自分の写真は、偶然のタイミングで撮影したスナップばかりだったので、空気感をつくることを学びました」
約3年のアシスタント時代を経て、独立
アシスタント時代には、カメラの技術的なことだけでなく、社会人としての基礎知識、フォトグラファーとしての想像力の大切さを師匠に教わったという田邊さん。「師匠からの教えはもちろんですが、アシスタント時代にいろんな現場を見れたことは貴重な経験になっています。24歳で独立してからは、カメラの機材をそろえるためのお金のやりくりがたいへんでしたね。最初は、暗室なども友人に借りたりしていたんですが、師匠に『人に甘えるな』と怒られたことがあって…。自分で苦労して手に入れることで、大切にする気持ちや、重みがわかってくるんだと教えられました」そんな厳しくもやさしい師匠から譲り受けた写真右上の「NIKON F3」は宝物の一つだそう。