文化出身、次世代クリエイターたちのつながり Next!

EDING:POST 代表/デザイナー/アートディレクター 加藤 智啓 1985年愛知県生まれ。2007年アパレルデザイン科卒業。同年ファッション高度専門士科へ進学。2008年に卒業。2007年に「EDING:POST」を立ち上げる。在学中から様々なデザインコンクールにて数多くの賞を受賞。2009年にmethod Inc.の取締役に就任。プロダクトデザインに留まらず、花火、お米、コーヒーショップ、アパレルブランドなど多彩なジャンルのデザインやディレクションを手掛けている。

writer

ライター 小仁所 木綿

文化服装学院スタイリスト科を経て、ファッション流通専攻科ファッションディレクター専攻を卒業。ストリートカルチャー誌の編集部に在籍した後、独立しフリーの編集・ライターとしてファッション、ビューティ、音楽、ダンスなど幅広い媒体で活動中。

writer

EDING:POST 代表/デザイナー/アートディレクター 加藤 智啓

デザインに困っている人たちを救う“デザインの病院”を

次世代のファッション業界を支える、文化の若手卒業生を紹介する企画「Next!」。今回ご登場いただくのは、デザイン事務所「EDING:POST」代表で、アートディレクターとして多岐に渡って活躍する加藤智啓さんです。

服とプロダクトデザインの間を目指して

アートディレクターというと、一般的には手を動かさずに目に見える部分の指示を出す役割というイメージがあるが、加藤さんの場合は違っていて、企画の段階から携わり、最終的なデザインまでを一貫して担っている。そのジャンルは幅広く、アパレル事業だけでなく植物、花火、お米、コーヒー、パンケーキなど…実に多彩だ。起業したのは在学中の2007年。小さい頃から物作りに興味があり、美術系の高校で3年間アートを学んだという加藤さん。「文化に行ったからと言って服を作るという概念ではなくて。アパレルを身に着けたから出来ることがふくらんでいったという感覚です」。2年次に“服とプロダクトデザインの間”となるものを考案し、最初は1人でデザインし作ってみたのが始まりだった。

在学中に発表したものがプロのバイヤーに認められる

在学中に思いつき1人で作ってみた製品は、コストが割に合わず商品化は出来ずに終わる。しかしそれを機にいろいろなアイディアが浮かび、3年次にはハンバーガー(の包み紙)に見立てたTシャツを手作りで50着製作し展示会を開催。そのアイディアが好評で見事完売した。「これは売れるなと実感しました。プロのバイヤーさんも来ていて、お店に置くという話が現実味を帯びてきて、実際にオーダーをもらったので作らなきゃいけない状況になりました」。100単位でのオーダーになったため工場を探し量産することになったが、それが売れたとしても原価にかかる出費があり、収入は見合わなかったという。生活するためにアルバイトと掛け持ちでデザインの仕事を進めていった。

アイディアを製品化してくれる会社との出会い

次に考えていた製品もコストが掛かるため1人では生産できずに悩んでいた。そんな時、プロダクトを製品化してくれる会社と出会うことになる。アイディアを売り込み、その会社が惚れ込んでくれたら製品化してくれるのだという。売り込みに行くとアイディアを気に入られ製品化することが決まる。それが4年次(ファッション高度専門士科)のことだが、製品化されたのは加藤さんが卒業してからだった。「プロダクトの世界って製品化されるまでに早くて1年くらいかかるんです。検討や調査、デザインの権利などで。製品化されるまでの1年間で、ほかの商品のデザインを考えて展示会に出展したり、新作を作り貯めて発売もしていました」。無事製品化された商品は、売り上げがその会社の1位を記録し、世界規模で取り扱われる大ヒット商品となった。



ディレクターとしてパッケージデザインの微調整まで行う。

人から人への繋がりによって仕事が広がっていく

それ以降、仕事の量は増えていくが、収入面ではなかなか満足のいく状況には至らず、3年ほど悩む時期が続いたようだ。4年目くらいから仕掛けてきた商品が売れて軌道に乗り、その頃からお店のディレクションなども手掛けるように。「仕事はわらしべ長者みたいに拡がっていったんですよ。僕が作ったものを見た人が仕事を依頼してくれて、それを見たまた別の人が仕事を依頼してくれて…って、人から人へ」。関わった1つの仕事から2~3つの仕事が舞い込むようになり、その規模はどんどん広がっていった。「もともと全体を手掛けるのが得意なんです。僕の場合デザインだけじゃなくてトータルでの組み立てができるので、今のスタイルがすごく自然。トータルでやるから実質の売り上げも上げているんですよ」

困っているクライアントを救えるデザインの病院

今ではお店やブランドだけで20プロジェクトが同時進行しているという。「デザインの病院みたいなものを作りたいと思っているんです。デザインに困っていて頼みに行ったら回復して帰っていけるような。デザインして納品したらそれで終わりなんじゃなくて、そのことで何がどう変わるのか? 関わった人がどうなるのか? っていうことに興味があるんです」。加藤さんの人生プランは「20代は受け仕事をやりきって、30代からは自分でも自主企画をやろうと思ってるんです。デザインという領域を完全に飛び越えて、今のこの時代に必要なことをもっともっとやっていきたいです。少しでも明日が豊かになることを」
※この取材内容は2012年6月時点のものです。


最近手掛けたお米のデザイン案と、仕事の必須アイテム。


オフィスの棚にはこれまでに手掛けたプロダクトがディスプレイされている。


(左)花火のセレクトショップ「fireworks」。カラフルでおしゃれなデザインの花火は結婚式の引き出物としても人気。
(右)葉っぱの手紙「leaf letter」。大きな葉っぱのデザインがインパクト大の便箋は折りたたんで手紙に。


コーヒーとコーヒー菓子のお店「OMOTESANDO KOFFEE」。次世代のコーヒーショップとして人気店に。


(左)古式精米製法「隅田屋米」。絶妙な割合で配合し、いま一番おいしいブレンド米をお届け。
(右)“これからの東京のおやつ”として作られた「東京パンケーキ」。東京の新たなお土産スイーツに。パッケージは3パターン。

Links
NEXT

INDEX PAGE/今まで登場した卒業生たち

PAGE TOP