服とプロダクトデザインの間を目指して
アートディレクターというと、一般的には手を動かさずに目に見える部分の指示を出す役割というイメージがあるが、加藤さんの場合は違っていて、企画の段階から携わり、最終的なデザインまでを一貫して担っている。そのジャンルは幅広く、アパレル事業だけでなく植物、花火、お米、コーヒー、パンケーキなど…実に多彩だ。起業したのは在学中の2007年。小さい頃から物作りに興味があり、美術系の高校で3年間アートを学んだという加藤さん。「文化に行ったからと言って服を作るという概念ではなくて。アパレルを身に着けたから出来ることがふくらんでいったという感覚です」。2年次に“服とプロダクトデザインの間”となるものを考案し、最初は1人でデザインし作ってみたのが始まりだった。
在学中に発表したものがプロのバイヤーに認められる
在学中に思いつき1人で作ってみた製品は、コストが割に合わず商品化は出来ずに終わる。しかしそれを機にいろいろなアイディアが浮かび、3年次にはハンバーガー(の包み紙)に見立てたTシャツを手作りで50着製作し展示会を開催。そのアイディアが好評で見事完売した。「これは売れるなと実感しました。プロのバイヤーさんも来ていて、お店に置くという話が現実味を帯びてきて、実際にオーダーをもらったので作らなきゃいけない状況になりました」。100単位でのオーダーになったため工場を探し量産することになったが、それが売れたとしても原価にかかる出費があり、収入は見合わなかったという。生活するためにアルバイトと掛け持ちでデザインの仕事を進めていった。
アイディアを製品化してくれる会社との出会い
次に考えていた製品もコストが掛かるため1人では生産できずに悩んでいた。そんな時、プロダクトを製品化してくれる会社と出会うことになる。アイディアを売り込み、その会社が惚れ込んでくれたら製品化してくれるのだという。売り込みに行くとアイディアを気に入られ製品化することが決まる。それが4年次(ファッション高度専門士科)のことだが、製品化されたのは加藤さんが卒業してからだった。「プロダクトの世界って製品化されるまでに早くて1年くらいかかるんです。検討や調査、デザインの権利などで。製品化されるまでの1年間で、ほかの商品のデザインを考えて展示会に出展したり、新作を作り貯めて発売もしていました」。無事製品化された商品は、売り上げがその会社の1位を記録し、世界規模で取り扱われる大ヒット商品となった。