「気持ちいい」感覚を呼び覚ます素材
小野莫大小(メリヤス)工業が開発した特許素材「コズモラマ」。コットンやリネンといった天然素材を使い、吸水速乾性などの高い機能性とファッション性を併せ持つ、国内外の一流デザイナーの厚い支持を得る素材だ。杉原さんも、コズモラマに惚れ込んだデザイナーのひとり。「僕自身もそうでしたが、一度着ると脱ぎたくなくなる肌触りのよさを、一人でも多くの人に知ってほしい。着るものに無頓着な人こそ、着心地のいい服を着ると気分がまったく違ってくることを体感してほしいです」ショップsmoothdayでは、カットソーなどの衣類だけでなく、生活の中で肌に直接触れるさまざまなものをコズモラマに置き換え、誰もが持つ「気持ちいい」という感覚を呼び覚ましたいという。
コズモラマとクリエーション
杉原さんがコズモラマに出あったのは、パリの有名メゾンでデザイナー・パタンナーをしていたとき。チーフデザイナーの男性が着ていたカットソーに、それまで抱いていたジャージー素材のイメージを覆す衝撃を受け、その存在を知ったという。「過去のどの素材にも該当せず、モダンでありながら老若男女が永遠に着られる、また着たいと思わせることのできる素材だと確信しました」コズモラマを多くの人にどう伝え、どうシェアしていくかを考えた結果、「最初にショップを作る」という今までのファッション業界とは逆のアプローチで、テキスタイルメーカーの未来のあり方をお客さんとともに作り上げたいと思った杉原さん。今後はコズモラマの魅力や特性を、パリで突き詰めた立体裁断の高度なテクニックを使って、惜しみなくアピールしていきたいそうだ。
ファッション業界の常識を崩したい
杉原さんが「今後デザイナーとしてどう生きていくか」を考えるとき、コレクションで作品発表し、バイヤーやメディア関係者に実力が認められ、ショップで商品が展開される…という既存の流れには少々限界を感じるようだ。「たとえばセレクトショップに商品を置いても、お客さんが数多くの商品のなかから自分の商品を選び、素材の特性をきちんと理解してくれる可能性は低いです。時間はかかりますが、ショップで一人ひとりに素材や商品の魅力を伝えて支持者を増やし、その上でコレクションやショップの世界観ごと海外進出を目指すほうが息の長い活動ができるかなと思います」杉原さんが目指すのは、これまで縦の関係にあったテキスタイルメーカー、デザイナー、消費者が横につながり、ともに歩んでいくことだ。